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マイクの使い方を部員の皆さんにも試してもらった後、もう一度、Chups:)の皆さんに演奏してもらいました。すると、これまでの演奏の中で一番、歌詞が聴き取れるパフォーマンスになりました。声の張りもいちだんと増したように感じられます。紅谷さんも「最初と今では違うバンドのようですね」と確実に向上したバンド・サウンドにうれしそうです。
「マイクに近寄って歌えていたので声自体がしっかりスピーカーから出ていましたし、言葉の一つ一つが鮮明に伝わってきました。これは恐らく、自分が良い声で歌えているということに慣れてきたのも大きいのではないかと思います」
では、ボーカルの土屋さんはどんな風に自分の声を感じていたのか聞いてみました。
「最初は緊張していたこともあって、全然うまく歌えなかったんです。普段はマイクを使わずに発声練習しているんですけど、そのときみたいな響き方じゃないし、スピーカーから自分の声がこもった感じに聴こえていたので、 “アレ?”と思ってたら歌詞を間違えてしまいました。でも、最後の演奏では自分の声が透き通って聴こえて、正確に聴き取れたので、普段の練習に近い感じですごく歌いやすいと感じました」
ドラムの高山桃果さんも、「グライコをオンにしたときは声が通って聴こえるので演奏しやすかったです」とのこと。ベースの青木真鈴さんは、「いつものライブだとボーカルがあまり聴こえないこともあって、そういう場合は合わせづらいんですけど、今日は透き通って聴こえたので弾きやすかったです」と感想を語ってくれました。歌が聴こえるということは、メンバーの演奏にとっても非常に大切なことなんですね。
また、ここまで紅谷さんの隣りで、その操作の一部始終を見ていたPA担当の村山富士子さんはある発見をされていました。
「これまで低音と高音だけを注目していたんですけど、紅谷さんの操作を見て、中低音や中高音も大切ということがわかりました。また歌い出しとサビの部分で、全く違う設定にされていたのに気づけたのも良かったです」
そうなんです。紅谷さんは演奏を聴きながら、その都度、細かく設定を変えていたのです。これはプロならではのテクニック。この境地に達するにはやはり経験を積むしかありません。すぐには難しいとは思いますが、紅谷さんは「とにかくグリグリ回すこと」とアドバイスしてくださいました。
「ちょっと回しただけじゃ、意外とその違いはわからないんです。だから低音が足りないなと思ったら、まずグリグリ回してみる。それで“ドン”と低音が出すぎたりしたら、ちょっと下げればいいんです。そういう経験を何度も積むことでだんだん感覚が身に付いてきて、極端に回さずに適度な調整ができるようになります。頑張ってくださいね!」
最後に部長の下田美汐さんにも感想を伺いました。
「新しい音響のことを学べてすごく良かったです。特にマイクの音の通り具合が本当にこれまでとは全然違っていました。この経験を今後も生かしていきたいと思います」
今回、“歌を主役にする”ことによって見えてきたことがあります。それは“歌を主役にすると、バンド全体のレベルが上がる”ということです。
実は、最初にChups:)が演奏したとき、取材班は「演奏も歌もバランスもいいんだけど、何かモノ足りない気がする」とボンヤリ思っていました(生意気ですみません!)。その理由を振り返って考えてみると、バンド全体の音量が控えめだったこと、そしてバンドの一体感的なものに少し欠けていたことが理由だったように思います。
というのも、その後に“歌を主役にする=ボーカルがしっかり前に出ている”という状態を作れたことによって、バスドラムやスネアの音も出せるようになり、結果としてバンド全体の音量バランスが改善され、ロック・バンドらしい迫力も出ました。結果としてバンド全体の音量を無理なく上げることに成功したわけです。
そして、先ほどのバンド・メンバーの方の感想にもあったように、全員が歌をきちんと聴きながら演奏できるようになりました。そのことがバンドの一体感にもつながったのではないでしょうか。そんなことを紅谷さんと話したところ、やはり同じ感想をお持ちになったようです。
「Chups:)が最初に演奏したときは、ベースが大きくて、ドラムが小さいという音量バランス的にデコボコのある状態でした。でも、グライコやミキサーのEQ、それにマイクの使い方などで歌がハッキリ聴こえる環境を作れたので、そういう楽器間のバランスはほとんど気にならなくなりました。いわば、ボーカルが楽器と楽器の間をつないでいるような感じですね。この状態であれば、バンド全体の音量をもっと上げても成立すると思います。やっぱり、ボーカルがきちんと聴こえるというのは、バンド全体にとって本当に大事なことなんです」
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こうして取材は終了したのですが、この日はもうひとつイベントがありました。それは1年生のバンドが初ステージを踏んだのです! しかも、初めてとは思えない堂々としたステージングで会場は大いに盛り上がりました! この経験を生かして、今後もどんどん成長してもらいたいな~と思いながら、帰路についた取材班でした。
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