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目指せ!音楽業界デビュー 「音楽業界ってどんなところ?」 いつも音楽を聴いている、カラオケに行きまくっている、バンド活動をしている、宅録にハマっている……きっとみんな、それぞれのやり方で音楽を楽しんでいると思う。そんな日々を過ごすうちに音楽がかけがえのないものになって、将来は音楽で食べていきたい、音楽に携わる仕事がしたいと思い始めている人もいるだろう。そこで本特集は、“音楽業界デビュー”をテーマに、音楽を仕事にするための知識や、夢をかなえるための道筋を紹介していく。まずは、音楽業界のなりたちとさまざまな仕事についてチェックしていこう。

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音楽業界ってどんなところ?」 「CD制作に関わるいろいろな職業」 「あなたにぴったりの音楽職業は?」 「音楽業界の仕事内容を知ろう

仕事のタイプ:作る人と、サポートする人

やっぱり自分がイチバン

 音楽でメシを食う、つまり音楽を仕事にする、というとまず思い浮かぶのが、プロのミュージシャンになることだろう。これを読んでいるキミたちなら、あこがれのプレイヤーのあの人やこの人、あるいはシンガー・ソングライターや作曲家などのアーティストを思い浮かべているかもしれない。

 しかし、音楽というのは、ただそこにあるだけでは聴き手に届かない。例えばCD 1 つとっても、録音制作からプロモーション販売まで、リスナーの手元に届くまでにはさまざまな人たちが関わっている(詳しくはP 006 を見てほしい)。プロの世界だけではない。アマチュアのライブだって、リハーサル・スタジオやライブハウスのスタッフなしには音楽を人に届けることは不可能だ。単に楽器を演奏するだけでも、そこには楽器メーカーの社員、開発者、メンテナンスの技術者から楽器店スタッフまで、多くの人のサポートがある。これらすべてが音楽の仕事なのだ。


音楽を作る目的:リスナーに届ける音楽、役割を果たす音楽

三度のメシより腕みがき

 音楽に関する職業がミュージシャンだけでないように、音楽の目的もオリジナルCD を作ったりライブをすることだけではない。音楽は、発表すること自体が目的とされる以外に、何かほかの目的のために必要とされることもあるのだ。

 例えば、映画やTV ドラマの伴奏音楽、CMの音楽、あるいはインターネット上のさまざまなWeb サイトで鳴るサウンドなど、音楽が必要とされるシチュエーションは多い。CD などのオリジナル作品がリスナーを満足させることを一番の目的にしているのに対して、こういった音楽=広い意味でのBGM は、そこで求められる役割をしっかりと果たすことが要求されるのが特徴。映画監督やCM ディレクターなど、直接、必要とする人たちの要望を聞きながら、それにしたがって音楽を作っていくことになる。こんなふうに必要に応じて作る音楽も、音楽に関する仕事の大きな部分を占めているわけだ。



業界のなりたち:中心は音楽プロダクション

流行を仕掛けます

 ここまでに書いた2 つの観点、つまり音楽が作られる過程と、どのような目的で作られるかによって、いろいろな仕事の分野があることになる。

 そんな中で中心的な存在になっているのが、音楽プロダクション(音楽制作会社)だろう。音楽プロダクションは、作曲家やプレイヤーなどのミュージシャンをかかえ、音楽を制作する。アーティストを主に扱うプロダクションでは、所属アーティストのCD制作や、ライブ・コンサートを実施する上でのさまざまな仕事を行うのがメインの業務になる。その内容は、レコード会社やイベンターとの相談、所属アーティストのスケジュール管理、プロモーションなどで、アーティストとその楽曲をいかに世の中に広めるかを考えていくわけだ。一方、(広い意味での)BGM制作を主に行うプロダクションでは、広告代理店や映画会社などから発注を受けて、内容に応じて所属ミュージシャンに仕事を配分するのが主な業務。

 いずれの場合も、自分の会社に所属するミュージシャンだけで間に合わない場合は、外部のミュージシャンに仕事を発注することもよくある。所属バンドにキーボーディストがいないけどCDにキーボードを入れたい、といった場合、社外のキーボーディストを手配するわけだ。だから、フリーの音楽家にとっても音楽プロダクションは縁の深い存在になる。また、アーティストの手助けをBGM 制作系のミュージシャンが行うことも多い。バンドの楽曲のストリングス・アレンジなどは、まさにその境界的な仕事の典型と言えるだろう。

 そのほかにも、音楽プロダクションに関連する業務として、ミュージシャンのスケジュール管理を主に行うマネージメント会社、音楽プロダクションからの発注に応じてミュージシャンを手配するブッキング会社、楽曲の管理を主に行う音楽出版社といった専門部門に特化した会社もある。

 音楽をとりまく仕事はまだまだある。先にも書いたように、楽器メーカーやレンタル会社、リペアマン(修理技術者)、クラフトマン(楽器製作者)、楽器店スタッフなどの楽器に関わる仕事。レコーディング・エンジニア、CD プレス技術者、CD 店スタッフといったCD に関わる仕事。PAエンジニア、イベンター、ホール・スタッフなどのライブ・コンサートに関する仕事など、音の出る場所にはそれぞれ仕事があるといっても過言ではない。

 さらに、こういった仕事の多くは会社によって運営されている。会社である以上、経理や総務といった一般事務も必要で、それらを専門に行う社員もいる。レコード会社のような、一見、音楽業界の中心にあるようでありながら仕事内容は書類の作成とお金の計算がメイン、といった職種もあるのだ。


求められる人材:人々の心を潤すプロフェッショナル

業界を支えるザ・裏方

 今日、音楽をとりまく環境は大きく変わってきている。インターネットの発達、なかでもダウンロード販売の登場によって、アルバム単位でじっくり音楽を聴くという従来のスタイルから、1 曲単位で気軽に音楽を消費するといった聴き方が主流になりつつある。また、現在の経済状況の悪さを反映して、あらゆる業種で短期的に大きな利益を上げることが求められ、成果主義への圧力も強まりつつある。しかし、そんな時代だからこそ、人々の心を潤す音楽が強く求められているとも言える。IT ビジネスのコンテンツといった単なる商品ではなく、血の通った音楽を作り、育て、的確に届ける、真のプロフェッショナルが必要とされているのだ。そうでなければ音楽自体が衰退してしまうだろう。

 音楽を仕事にするというのは、単にミュージシャンになるだけでもなければ、音楽関係の会社に就職するだけでもない。また、オリジナル作品を発表するアーティストになるだけが、ミュージシャンになることでもない。さまざまな仕事があり、それによって音楽との距離もいろいろなのだ。この業界を目指すなら、自分のできること、したいことに応じて的確な道を選択し、目標を設定しよう。音楽の未来はキミたちにかかっている。



文:高山博
アレンジャー/コンポーザー。クラシックはもとより民族音楽からポップス、ロック、アニメ音楽まで幅広い知識と経験を持ち、CD、TV、イベント、音楽誌などで活躍中。コンピューターとシンセサイザーを使った音楽制作にもその最初期から取り組んでいる。現在、映画美学校にて音楽美学講座を担当。
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