ホーム > コラム > 【対談】講師たちのボヤキあい ~ 宮脇俊郎×和田一生(ギターナビ主宰)
このコーナーでは、ミュゥスクレッスンに掲載中のスクールに所属する講師さん同士で、音楽のこと、レッスンのこと、人生のこと…など色々語っていただきます。普段は聞けない講師の本音も聞けるかも・・・
第一回は、おなじみ宮脇俊郎さんをホスト役に迎え、千葉県白井市で「ギターナビ」を主宰する和田一生さんを訪ねました。ギタリスト同士、はたしてどんな話が飛び出すでしょうか。では早速覗いてみましょう!
宮脇 はじめまして、宮脇です!
和田 こちらこそはじめまして!今日はお会いできるのを楽しみにしてました!とても光栄です!
宮脇 こちらこそ!実は今日の対談を前に、ギターナビさんのHPを覗いたんですけど、すごく見やすくてちゃんとしてて、面白いですよね!
和田 いやいやとんでもないです…宮脇さんのHPにはかないません(笑)
(宮脇、おもむろにレッスン室内のピアノを弾きはじめる)
和田 ピアノも弾かれるんですね~
宮脇 いや、あの、少しだけ…みんな知らないはず(笑)というわけでちょこっと一緒にどうですか?
(この後、宮脇さんピアノ弾き語り&和田さんもギターを持ちセッション突入。ブルース、ジャズ、ビートルズなど弾きまくり歌いまくりで約20分)
和田 いやー、朝っぱらからかなり濃いセッションでしたねえ!
宮脇 いやー、いきなり遊んじゃいました(笑)ちなみに今現在の僕の趣味はピアノの練習なんです!
和田 そうなんですか?
宮脇 そうなんです。なので今日は僕のピアノについて語り…じゃなくって、ギターナビの和田さんと一緒に、色んなお話をしていきたいと思います!
●和田さんって?
宮脇 そもそも、和田さんがギターを始めるきっかけって?
和田 14歳の頃に聖飢魔Ⅱに憧れて始めました!
宮脇 聖飢魔Ⅱですか!
和田 友人ですっごく聖飢魔Ⅱを好きなヤツがいて、家に遊びに行ったら部屋にエレキギターがあって。で、そいつがおもむろに『蝋人形の館』のリフを弾き始めたんですよー。で「カッコいい!」ってなって、4万円一式セットを買い(笑)ギターを弾くようになったんです。
宮脇 なるほどー、そこからギター人生が始まったんですね!
和田 高校時代になると、ディープ・パープルとかレッド・ツェッペリンとか王道に入っていきました。あと、GITという存在を『寺内ヘンドリクス』っていうテレビ番組を見て知って。
宮脇 西山毅さんだ!
和田 そうなんです!西山さんがGITに行くっていうコーナーで「すごい所があるんだなー」って調べてみたら、ポール・ギルバートとかフランク・ギャンバレとかジェニファー・バトンとかすごいギタリストが出ている学校とわかり、「あ、ここに行けば僕もそうなれると(笑)」って勝手に思い、行くつてを探ってみて・・・
宮脇 行ったんですか?
和田 行っちゃいましたねえ(笑)でも、そこでの経験が今のレッスンで非常に役立っています。
宮脇 例えば?
和田 たくさんあるのですが、しいて挙げるならばスコット・ヘンダーソンの初心者向けクラスで受けたアドリブのレッスンですか。これ、僕の教室でも日本人向けにして取り入れてるんですけど、たとえば1音だけでアドリブの練習をやったりします。
宮脇 1音!ていうかスコヘンの初心者向けクラスなんてあるんですね(汗)
和田 1音だけだと音程の上下が無いので、リズムで抑揚をつけるしかできないんですよね。イイ感じで弾けたら、次は2音、その次は3音…という風に少しずつ音数を増やしていくと、これが楽しくって。アドリブにコンプレックスを持っている人でも、全然楽しく弾くことができるんですよ。
(実際に二人でやってみる)
宮脇 これは楽しい!てか素晴らしい!いいですね!
和田 僕自身、アドリブって苦手だったんです。でもすっかりこれで開眼しちゃいました(笑)生徒さんも実際楽しくなっている様子がわかると、ホント嬉しくなりますね。
宮脇 MIに行っていた時は講師をしようなんて思ってないですよね?
和田 全然思ってませんでした(笑)で、卒業してこっちに戻ってきても、音楽だけでは食べていけなくて、普通のアルバイトもしてました。で、バイト先の同僚がたまたまギター教室に通っていて、その教室を紹介してもらってそこで教え始めたんです。いわゆる講師としての意識の始まりですね。で、2008年にギターナビという形で独立しました。
●ギター講師という職業
宮脇 最近は、ギタリストではなくギター講師を目標にしている人って増えているみたいですよね。
和田 あ、確かにそうみたいですね。宮脇 僕が始めた20年前は、アンヴィルの映画じゃないけど『夢を諦めきれない男たち』っていうか、ミュージシャンとしてだけでは心もとないから講師業もやっている、っていう人たちのほうが多かったんですよね。
和田 そうなんですか~。
宮脇 先日、富吉さん(tomiyoshi guitar school主宰)にお会いする機会もあったんですが、和田さんや富吉さんみたいに、若い頃から自分でスクールを立ち上げて生徒さんを集め、カリキュラムを作ってきちんと仕事として講師をやっている方々がホント増えました。
和田 僕の感覚でしかないのですが、ギター講師が、職業として世間から認められてきているっていう感じはします。ちなみに、宮脇さんはなぜ講師になったんですか?
宮脇 僕、実は小学校の先生になりたかったんです(※編集部注:ご存じのかたも多いと思いますが宮脇さんは教員免許を持っています)。あと、ギタリストにもなりたかったんです(笑)。その2つの夢を合致させたところが、ギター講師なんですね。あと、高校生当時、某誌で書いていた斉藤節夫さん(故人)の文章や記事が好きで、ライター業にも興味があったんです。20代は「このへたくそがー!」と言われながらもギターの仕事をいただき、そして右往左往しながらの三十路が過ぎていき、気がついたら今こういう仕事をしている、みたいな(笑)。
和田 たしかに全部やれてますね!うらやましいなあ。
宮脇 和田さんはギター教室をやっていて嬉しいなって思う時ってどんな瞬間ですか?
和田 たくさんありますが、生徒さんから「ギターうまくなったって友達から言われました」とか聞くと嬉しいですね。あと、その生徒さんが別の生徒さんを連れてきたときですか。これって、やっぱりその生徒さんがうちの教室が良い、って思ってくれないと連れてきてくれないですし。
宮脇 あ、それはいいですね!経験上、クチコミって、良い印象だと最良の宣伝になるんですよー。実際に通って、良かったから人に勧めるわけであって。勧められた側も、信頼のおける友達からだと安心ですし。その繰り返しで教室って地元で根付いていくんですよね。なにしろ生徒さんが幸せに感じること。長く続けるためには、そういう力が必要なんです。
和田 宮脇さんが教室を始めた頃も苦労されましたか?
宮脇 一回一回のレッスンが真剣勝負の繰り返しでしたね。初心者だろうと経験者だろうと満足してもらわなくては駄目だし、手を抜けないんです。もし一度でも駄目だった場合、話が広がると何倍にもなって跳ね返ってきますから。あと、ギター講師の人とかプロとか来たらまた別の意味で気を遣います。逆に教えてくれって言いたい(笑)。
和田 ありますよね!僕も生徒さんから教わることが実際多い気がします。気づいたのは、教える事って一番優れているギターの練習方法っていう事実(笑)
宮脇 あ、実はその通りです(笑)
和田 学校にいたころより今のほうが勉強になってますね。真剣にこちらも聞くし、調べたりするし。
宮脇 生徒が常にいる、っていう緊張感が、本番モードなんですよね。説明している流れで、たとえば普段弾いたことのないポジションとかで実例を弾いてみようとして、ちょっとミスタッチとかすると、それだけでしばらくヘコみますね。
和田 で、それでまた自分で練習したり。
宮脇 そうそう。いい材料になるんです。あと、理論を教えてくれって言われたときに、コード説明の段で、意外にうまく言えなかったり。でも、言わなきゃいけない場所なので、弾くためでだけでなく説明をするための理解をするようになるんです。
和田 これって大きいですよね。それまでは何の疑いも持っていなかった知識やテクニックについて質問をされたときとか・・・
宮脇 そうなんですよね。理論だけでなく、ギター各部の名称とか。ホント調べましたよ。ペグって本当はマシンヘッドって言うこととか(笑)。ホント、積み重ねで深まった。自分が説明する側になったときに、どうしたらいいのかっていう繰り返しですね。僕の場合だと、それが本のネタにもなったりして。生徒さんとのやりとりで自分も育っていった感じです。
●講師と生徒
和田 ちなみに宮脇さんはどういった気持ちで生徒さんと接してますか?
宮脇 僕は「みんなギター好きなんだから先生生徒もなく楽しくやろうよ」みたいな形で、生徒さんともギター好き同士っていう形で接しているんです。僕が持っているスキルの中で、同じギター好きの一人である生徒さんに教えてプラスになるものがあり、それをただ伝えるだけなんです。で、一緒に上を目指していきましょう、っていう感じですね。ギタリストにライバル意識ってのは基本的に僕持てないんですよ。野村(大輔)くんとかにもね。
和田 みなさん仲良しなんですよね!
宮脇 たとえば、今回和田さんのHPを先日見ていたときも「おー、ちゃんとやってるよー、この人面白そー」みたいな。
和田 いやーそんな・・・適当なんですけどねー(汗)経験者にはどういったスタンスで教えてますか?
宮脇 ギターっていう楽器は、いろんな人が来ますよね。ボサノバだったり、ジャズをやりたいって人や、バリバリのブルースを弾きたいって人や・・・僕の場合、まず、生徒さんに何が必要なのか、この人は何を満たしたいのか、を察知するようにします。
和田 何をしたくてこの教室に来たのか、ですね。
宮脇 たとえば速弾きとかで、僕よりも全然速く上手く弾けてるのに「お願いします」って来た場合、素直に完成されている部分については「出来てます」って言って、そのうえで欠けてる部分とかを伝え、そこをレッスンしましょうって。大事なのは、その人が欠けている部分を気付かせてあげるっていう事が重要なのかと。生徒さんも、自分に足りない部分がわかったことで目標が出来ますし。
和田 気づくって大事ですよね。そういった点では、宮脇さんのところでやっている、ビデオを使ったレッスンって、客観的に本人も見れるから、いいですよね。ウチはまだ音だけなんですが、僕もやろうと思っているんです。
宮脇 生徒さんからも好評で、すごく効率がいいみたいです。生徒さんに言わせると、ノートをとる手間が省けた、みたいな。後で読み返せる感覚ですね。ぜひ和田さんのところでも導入してみてください。なにしろ復習は重要なんです。
和田 ホント、僕もそうですけど、何かしらん記録できておくと、後で練習できるんです。記録としては、教える側がミスしても記録されてしまうので、ホント真剣になります。
宮脇 そうそう。自分でいけてないプレイも生徒さんは真剣にコピーしてきてしまうので…鍛えられますねえ。
和田 僕基本的に誉めるタイプなんです。でも、中には「きつく言ってくれ」って言われて、ちょっと言ってみたら、シュンとしちゃって。
宮脇 ありますあります。普段生活を共にしていない人間が同じ部屋に同じ時間にいることがなんと難しいことか。言葉が通じても、加減が伝わりにくい難しさってあるじゃないですか。たとえば、ジェフ・ベックを目標にしている人が、ジェフ・ベック本人に習う場合は多分楽なんですよ。でも、僕の所に来る生徒さんは、あくまでも僕という透明のフィルターを通して「ジェフ・ベックみたいに弾けるようになりたい」と思って来るんですよね。
和田 はい。
宮脇 なので、生徒の欲しているスタイルを教えてあげられるような役割を心がけています。生徒にとって不必要な知識のごり押しはしないようにして。でもたまーに宮脇のようなプレイをしたい、っていう人は来ますが(笑)ほとんどの人は自分の好きなスタイルがあるので、ボタンを掛け違えないよう心がけています。
和田 やっぱどうしても自分の得意なスタイルに持っていきたくなるんですけど、そこは抑えて生徒の行きたい方向をしっかり見極め、そこに向けてのレッスンやアドバイスをすることを心がけてます。
宮脇 終わった後に、生徒さんから「もったいない」時間だったって思われないようにしないといけませんよね。僕のスクールはレッスンの形態のせいか、何年かに1回だけ来るっていう人もいますし。限られた時間内の最初の数分で相手の欲していることを察するのはホント難しいです。
和田 時間という意味では、ホント最初のコミュニケーションは僕も大切にしています。わざわざ来ていただく方に満足してもらうために。もちろん、出張レッスンの際も同様です。
宮脇 出張レッスン、っていう言葉で思い出したんですが、今全国でギター教室がホント増えてて、昔のピアノ教室のようになりつつありますよね。ギターを弾きたいっていう人口が安定してきて、誰もがやってみようかな、って。都心でなくても教えてくれる場所が増えてきましたし。これってギター界にとってすごく重要なことですね。近所で安心して学べるし、ましてや和田さんのように出張も含めてフレキシブルに対応できる事で、すごく根付いたって思えるし、ピアノの先生、みたいな形でギターの先生っていう仕事も成り立つようになったのかなと。
和田 そのことで言うと、通信を使ってもレッスンできるようになるかと色々試しているんです。
宮脇 ホント今後は色々な形で、全国でギターを弾く人がもっともっと増えていってほしいですね。
(2009年11月 千葉県白井市 ギターナビにて)
→宮脇さんのスクール詳細情報はこちら!
→和田さんのスクール「ギターナビ」の詳細情報はこちら!
夜な夜な全国からギタリストが集うというお二人のブログも必見!
→宮脇俊郎「平和なレジャーぶろぐ」
→和田一生(ダックン)「ギターナビ・ブログ」