FUZZY CONTROL／SATOKO（Drum）インタビュー

●ドラムはお父さんである菅沼孝三さんから教わったんですか？
実は家では教えてもらったことがないんですよ、お父さん忙しくて。教わりたいと思ったらお父さんが講師をしている学校に通うしかなくて、メーザー・ハウスに入ったんです。若い頃は気持ち良さ、楽しさを優先していて、テクニックに固執しなかったんですけど、あるとき “ここまでできないと気持ち良くも楽しくもない ”というラインがあることに気づいちゃって、そこへ行こうと思ったら目の前が真っ暗だったという。そんな時期にメーザーに通って、練習しまくりました。

●メーザーで印象的だったことは？
私、クラスで一番うまかったんですね。そしたらベーシックレッスンの先生に利き手を封じられて、私は左利きなんですけど、逆手で練習させられたんです。それがすごく新鮮で。おかげでオープン（ハンド）でもクロス（ハンド）でも叩けるようになりました。あと、毎回の授業が軽い本番なんですよ。仲間が見てるから失敗したくない、だからもっと練習するようになるっていう。学校にいる 2年間、踏ん張るだけで、すごく力がつくんですよね。卒業時には、入学前とはまったく違う自分になっていると思いますよ。

●メーザー在学中に FUZZY CONTROLでデビューしていますが、結成の経緯は？
メーザーのスタッフが「カッコいいギターがドラムを募集してるよ」と声をかけてくれたのがきっかけなんです。デモを聴いてみたら、超好みの音楽で。きっと読者の中には音楽性の合うバンドを組めないって悩んでる人も多いと思うけど、音楽学校では先生が生徒をマッチングしてくれるし、外の世界ともつないでくれるので、仲間が見つかります。それに、町を歩いててもドラマーに出会う可能性は低いけど、学校では少なくとも自分のクラスは全員ドラマー。同じ悩みを抱えてるだろうし、自分にないものを持ってるだろうし、周りを見て初めて自分の長所に気づくこともある。そういう意味では群れるメリットってありますよね。

●プロとして活動していて、どんなところに厳しさを感じますか？
やっぱり一番でなくちゃいけないってところですね。自分よりもそこに立つ的確な人間がいてはいけないっていう。……私は最近、仕事の話をもらっても、自分より的確なドラマーがいると思ったら断っちゃいます。お父さんはよく「苦手でも得意って言え。できなくてもできるって言え。本番までにできるようにすればいいんだから」と言っていて、以前は「マジそうだぜ、父ちゃん！　かっけーぜ！！」と思ってたんだけど、本当に音楽が好きだとそうできないときがある。自分がやって、果たしてお客さんにお見せする音楽が素晴らしくなるのか……というところで揺れてますね。音楽に正解ってないから、自分にとって正しいかどうかという判断で揺れるというのが、お金を得ているプロの厳しさだと思います。

●これからのドラマーに必要な資質は何だと思いますか？
ドラマーって、実は飽和状態なんですよ。多くが生涯現役で、引退されている方ってほとんどいない。だから、どの世代も同じ土俵で勝負することになるんです。だけど今はCDが売れない音楽不況。そんな中で若い子たちはどうやって働いていけばいいんだろうって考えたときに、私がその子の親だったら絶対に持たせてあげたいのがテクニックです。テクニックがあれば、とりあえず食べていける。バンドで芽が出なければ、レストランやアミューズメントパークでも叩ける。才能だけあっても、センスだけあっても、グルーブだけあっても食べていけないです。グルーブが必要な現場なら、50歳くらいのグルーブマスターがもういますから。センスだけが必要なところには、ドラマーじゃないセンスの持ち主 ──プロデューサーやディレクターなどがたくさんいますから。だから、プレイヤーとして一流であることが一番の保険かなと思うんです。“これくらいうまければ仕事ができる”というプロのライン、そこにとりあえず行くというのはすごく大事なこと。最終的な目標はオンリーワンになることだとしても、自分にそういうものがあると信じて序盤で基礎をしっかり身につけておくことが早道だと思いますね。

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