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どうやったら音楽で食っていけるかなんて明確な正解はないし、誰にもわからない

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mabanua インタビュー

■なぜ音楽学校へ進学しようと思ったんですか?

バンドに憧れはあったんですけど、バンドでデビューするということが現実的に思えなかったんですよ。“バンドでやっていくぜ”なんて言っている友達は一人もいなかったし。それで、スタジオ・ミュージシャンだったら一人でもなれるよなと思ったんです(笑)。それにはドラムを突き詰めていくしかないけど、独学では無理そうなんで、だったら学校へ行こうと。中3の頃ですね。中高一貫の進学校に通っていましたが、高1のときに中退しました。両親は僕の気持ちを理解してくれたんですけど、“高校を卒業する年齢、つまり18歳になったら音楽学校へ通ってもいい”と言われて。なので、通信制の高校に転校して、空いた時間はセミプロというか、社会人で上手な人とバンドをやったり、ジャズ・セッションに通ったりして“武者修行”していました。

■アン・ミュージック・スクールを選んだ決め手は何だったのですか?

いろいろな学校の体験入学へ行ったんですが、AN は樋口晶之先生の印象がすごく良くて。この人が教えてくれるのなら安心だと思えたんです。実際、樋口先生からは技術的なことだけでなく、音楽を仕事にしていくうえで必要なマインドや人間性についても教わりました。

■自分と同じようにドラムが上手くなりたいと思っている人間が周囲にたくさんいるというのは、刺激になりました?

なりましたね。学生ってふたつのタイプに分かれるんですよ。バンドのメンバーとしてやっていきたい人と、スタジオ・ミュージシャ志向の人……後者の学生は、すごく上手だし、読譜力が高かったりして、自分も頑張らなくちゃと刺激になりましたし、自分はどちらに進みたいのかも改めて考えさせられましたね。それと、将来のことをあまり考えていないタイプと、真面目に考えているタイプとにも分かれました。でも、人ぞれぞれでいいんだと思うんですよ。学校に行ったからといって、チャランポランではいけないってことはない。逆にそういう部分があったほうが、音楽が広がっていくこともある……そんなことを考えるようになったのも学生時代ですね。

■ご自身は学生時代から音楽で生活したいと考えていたんですか?

それは明確にありました。ただ、どうやって食べていけばいいのかはわかっていなかったですけど。僕は学校に入ったら仕事を紹介してくれたり、音楽業界とのつながりを作ってくれたりするんだと思っていたんです。自分は音楽の勉強だけしていれば、仕事が入ってくるって。今思えば甘えなんですけどね。実際、そんなに甘くはないわけで。学校の紹介で仕事が入ることもありましたが、それを当てにしていても始まらないというか。21~22歳くらいまでは、バイトをしながらインターネットで音楽の仕事紹介サイトをチェックしたりしていました。仕事を斡旋してくれるというよりは、メンバー募集みたいなものが多かったんですが、とりあえず声のかかったものは全部やっていました。でもそこでデビューできるようなバンドに巡り合うことはなくて。これだったらライブハウスのセッションにでも行ってメンバーを探したほうが手っ取り早いし楽しいなと思って、池袋のマイルスカフェという店に出入りするようになったんです。そこで Ovall のメンバーや今のレーベルの人達と出会って。そこから一気に広がっていった感じです。

■それまでやってきたことが、そこで実を結んだわけですね。

そうですね。結果、それまでやってきたことは全部無駄じゃなかったと思いますし。だいたい明確な正解なんてないじゃないですか。どうやったら音楽で食っていけるかなんて、学校にも提示できない。それぞれにやりたいことも違うし、時代によってもその方法論は変わる。プロになるためにはこれをやらなくてはダメだなんて、そんなふうに考え過ぎる必要はないんじゃないかな。要は臨機応変に、余計なことを考えずにひとつひとつのことを精一杯やることが大事じゃないでしょうか。たとえお金がもらえなくても精一杯やる。手を抜いた時点で、すべて破綻してしまう気がします。まずは精一杯やって音楽を楽しむことが大事だと思いますよ。

【mabanua Profile 】
アン・ミュージック・スクール、ドラム科出身。ドラマー/ビートメーカー/シンガーという他に類を見ないスタイルで活躍する音楽クリエイター。2009 年からは Ovall にも参加。さらに大橋トリオ、藤原さくらなど、ドラマー、プロデューサーとして多くのアーティストと共演。5月からはChara の全国ツアーに参加するほか、SKY-HI、 LUCKY TAPES など、参加作のリリースも続々。 http://mabanua.com/
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