ホーム > 特集・コラム > 自分がギターを弾いているからこそ。お客さんが求めるものもわかる。
鈴木 悟さん(Dog Ear Guitars)インタビュー
■フェルナンデス・ギターエンジニア・スクールに入学したいきさつは?
□学生時代からギターを弾いていて、自分でペグを交換するくらいのことはやっていました。高校1年のとき、まさにこの「ミュージック・スクール・ガイド」を見て、フェルナンデス・ギターエンジニア・スクールに行こうと自分の中で勝手に決めていたんです。それで学校見学に行って、年齢層関係なくいろんな人が製作に没頭している様子や、木材やパーツがいっぱいあるのを見て盛り上がって(笑)。
■実際に入学してみてどうでしたか?
□それまでは、ギターをいじるといってもいろいろ加工したり、電気系の改造まではやっていませんでしたけど、先生が本当に何でも丁寧に説明してくれるので、戸惑いは全くありませんでした。あと、学校で1日中作業できるところも気に入って入学したので、授業の後も学校が閉まる時間まで毎日残って作業していました。
■ギターに対する見方も変わりましたか?
□パッと一言では言えませんが、考えるところはずいぶん変わったと思います。それまでは単に弾いているだけだったのが、構造とかをわかった上で弾くようになって、理解度が全然違うかなというのはあります。そして、ギターをいじるのがもっと楽しくなりました。
■演奏よりもそちらにのめり込んだ?
□いえ、そういうことはなくて、弾くことへの興味はずっとありますし、今もバンドをやっています。結局楽器なので、音楽を演奏してなんぼだと思うし、自分で弾いているからこそ、プレイする人の気持ちもわかる。だから、弾くのを辞めることは絶対にないですね。
■では、学校を卒業してからの経歴を教えてください。
□卒業とほぼ同時に、都内の楽器工房に入りました。学校の先輩でリペアの仕事をされている方がいて、その人を通じて当時の先生に話が来たんです。その工房では 10年間、リペアを担当していました。
■そこでは学校での経験がどのように役立ちましたか?
□学校では本当に基礎的なことをすべて網羅できていたので、工房に入ってから “これをやって ”と言われたときにもすんなり入っていけたと思います。とは言っても、学校での 2年間でいろんなことを吸収していったのと同じように、工房でも日々勉強の毎日でした。ありとあらゆるメーカーの楽器を触りながら、1本1本経験を蓄積していった感じです。
■その後、 2011年にカスタマイズ&リペア工房 Dog Ear Guitarsを開業したんですね。
□はい。実は学校に入る前から、 30歳くらいで自分の店を持てたらなっていう漠然とした目標を持っていました。でも 20代の頃は、さすがに 30歳では無理かなと思いながら、日々の仕事でスキル・アップに励んでいたんですけど、いろいろな出来事が重なって、ほぼ目標どおりのタイミングで独立することができました。前の工房でやっていたリペアは、楽器店の下請けが多かったので、お客さんと直接向き合う機会をもっと増やすには、お店という形にするのが一番だろうと思ったんです。その楽器を弾く人と対峙して話をしながら、求める形にもっていきたいと考えています。
■開業後、仕事は順調に進んでいますか?
□おかげさまで、ずっと忙しくさせていただいています。下請けのリペアと並行して、直接来てくださるお客様もいますし、そこから口コミで音楽仲間の方を紹介していただくこともあって、とてもありがたいです。そう言えば、学校の卒業生に出会うこともけっこうあるんですよ。先輩方とか同級生のつながりで仕事をいただいたり、仕事で知り合った人が実は卒業生だったり。そういう点でも、学校に入って良かったなと思いますね。
■これからリペアマンを目指す人にアドバイスはありますか?
□正直、大変な業界ですし、好きだからこそ辛くなる瞬間もあります。僕自身、ギターを弾きたくなくなるくらい辛いときもありました。でも、そういうのを乗り越えて今は楽しく仕事をさせてもらっています。だから、たとえこんな仕事はお薦めしないと言われても “俺はやるんだ! ”というくらいの気持ちが欲しいですね。そんなふうに、自分から学ぼうという姿勢があれば多くのものが得られる学校というのは、とても良い場所だと思います。
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