ESPギタークラフト・アカデミーの卒業生の方に伺いました

ギター／ベースの製作（クラフト）や修理（リペア）を学べる学校、それがESPギタークラフト・アカデミー（GCA）です。卒業すると、メーカーや工房などでギターやベースを作ったり、修理をしたりという仕事に就く場合が多いのですが、実はそれだけではないんです。GCAで学んだことは音楽業界のいろいろな仕事で役に立つんですよ。というわけで、今回は４組の卒業生の方にお話を伺いました。

04 Limited Sazabys
HIROKAZさん
RYU-TAさん
（GCA名古屋校卒業）

04 Limited Sazabysの皆さん。左端がRYU-TAさん、右端がHIROKAZさん

最新シングル『Squall』

ギターの調子が悪いときは
全部自分で対処していました

デビュー以来、快進撃を続けるロック・バンド、04 Limited Sazabysの2人のギタリスト、HIROKAZさんとRYU-TAさんはGCA名古屋校のご出身。GCAでの経験は今、どのように生かされているのでしょうか。

［HIROKAZ］
高校のとき、自分でピックアップ交換をしたりしていて、よく遊びに行っていた楽器店の方にGCAの存在を教えてもらいました。

GCAには２年間通って、ストラト・タイプ×２、レスポール・タイプ、ジャズベ・タイプ、バイパーなど基本的な形のものを中心に作りました。今は実家にあります（笑）。RYU-TAとはCGAの同じクラスで出会いました。

学校で好きだったのはボディ外周を削る作業です。今はテックの方にお任せしていますが、インディーズのときは、ギターの調子が悪いとき（ネックが反ってたり、ガリが出るとき）など、ちょっとしたトラブルは全部自分で対処していました。

自分でメンテナンスをできるようになったのでGCAに行って良かったと思ってます。木材の特徴を知ることができたのも良かったですね。

僕は軽音楽部がない高校だったので、読者の皆さんが正直羨ましいです（笑）。高校生活が終わってからもぜひバンドを続けていってほしいです！

［RYU-TA］
同じ高校から３人でGCAに入学したんですけど、当時はそのうちの１人とコピーバンドを組んでいて、「一緒に行かない？」と誘ってもらったんです。楽しそうだったし、ギターを作ってみたかったので進学を決めました。

GCAではストラト・タイプやモズライト・タイプ、変形ギターなどを作りました。得意だったのは塗装です。GCAに通って良かったのは、ギターが完成するまでの過程やパーツの種類、塗装などを覚えられたこと。ギターや音楽のことを話せる友達ができたのも良かったです。また、ボディの重さやRの歪み、ネックの握りなどは選んでギターを買うようになりました。

好きなことをするのはすごく楽しいし、練習してできたことが身になるとまた音楽が楽しくなるので、頑張って自分のものなるように楽器を楽しんでほしいと思います。

池部楽器店ハートマンギターズ
三好真瑠果さん
（GCA御茶ノ水校卒業）

アコギ好きが高じて
楽器店に就職

池部楽器店ハートマンギターズは、東京・渋谷にあるアコギ／エレアコ／ウクレレ／マンドリン／バンジョーの専門店。三好真瑠果さんは、アコギ好きが高じて、このお店に就職されたそうです。

ゆずが好きだったことがきっかけで、アコギを弾き始めたのですが、YAMAHA FG180の形が好きだったり、構造に興味があったりして、次第にギターを作ってみたいと思うようになり、GCAへ入学しました。

GCAで好きだったのは木工で、特にブリッジを削るのは楽しかったですね。就職先は、もっとアコギのことを知りたいと思ってハートマンギターズに決めました。仕事内容は販売がメインですが、GCAでの経験を生かして、ネックをトラスロッドで調整したり、サドルをサンダーで削ったりといった調整関係も行っています。状態の悪い楽器をサクサク直せて、お客様に喜んでいただけるとやはりうれしいですね。

働きはじめて７年目ですが、もっともっとアコギのことを知らなければと思っています。また最近は女性のお客様も増えているので、今後はそういう方とアコギの構造の話などもできるようになればいいなと思っています（笑）。

ウクレレアトリエcotan
佐藤匡史さん
（GCA仙台校卒業）

勤めていた会社を
退職して独立開業

佐藤匡史さんは、勤めていた会社を退職し、GCAで学んだ後に、宮城県塩竃市でウクレレ工房を開業されたという製作家。ウクレレ教室の先生としても活動されています。

ウクレレは趣味で作ったりもしていたのですが、会社員をしていた2012年頃から製作家を意識しはじめました。“定年退職後にこの趣味を活かせたらいいな”と漠然と考えていたのですが、“老後になってから??　いや、今やらないと絶対後悔する！”と考え直したんです。

最初に茶位ギター工房さんへ１年ほど月１程度で通い、ネットで情報を集めながら自力でウクレレを作ってはみたものの納得いくものができませんでした。そこで自分で調べるより、実際に習っていろいろ質問したいと思い、GCA仙台校へ入学しました。

GCAは先生方がとても良い方々でいろいろとご相談に乗っていただけたことと、設備がすごかったことが印象に残っています。特に木工と塗装の授業がすごく勉強になりました。

卒業と同時に開業し、現在も試行錯誤中なのでまだまだ修行の身ですが、ネックのグリップ感や指板のＲ加工、エッジの処理、サドルのピッチとその形状、ナットの高さと弦高など、プレイヤーとしての目線で制作しています。GCAで学んだ経験を生かし、エレキギターの優れた面をウクレレにも取り込みたいですね。また、優しく心地よい演奏が好きなので、優しく深い音色で演奏できるウクレレ作りも常に考えていることのひとつです。

小６からベースを弾いていたので“楽器の演奏は将来も続けているだろうなぁ”とは思っていましたが、今のような職業に就いているとは、当時はまったく思っていませんでした（笑）。趣味を仕事にすることに賛否両論はあると思いますが、好きなことだからこそ大変なことがあっても続けていくことができるのだと思います。

高校生の皆さんも進路に悩んだりすると思いますが、やる前からあまり考えすぎないこと。やってきた結果がつながっているだけですからね。なんとかなるから大丈夫！（笑）。

ESPカスタムショップ
石崎健太さん
（GCA梅田校卒業）

今後は学校などで
出張リペアも

自分の体格に合ったベースを作りたいという理由からGCAに入学したという石崎健太さん。現在はギターのオーダーメイドやリペアなども可能な楽器店、ESPカスタムショップで販売からリペアまで幅広く活躍されているそうです。

GCAでは指板にLEDを仕込んだベースを作ったりしました。組み込んでちゃんと光るのかドキドキでした（笑）。また、一枚の木の板がギターの形になっていくところに喜びがあったので、木工の授業が楽しかったです。

卒業後はESPのショップ、BIG BOSS京都店で販売員として勤務していたのですが、現在のESPカスタムショップへ異動することになり、そのタイミングでリペアマンのお話もいただきました。

ESPカスタムショップは、梅田という大阪の繁華街にあり、近くにライブ・ハウスや音楽スタジオもたくさんあるので、プロ・アマ問わず多くのミュージシャンの方に来店していただいています。また専用のリペア・ブースがあり、ほとんどの修理・改造を店舗で行っている点が特徴です。簡単な調整や修理などは即日お渡しできますよ。

現在の業務内容は、主にお客様からお預かりした楽器や、店頭品などのリペアと店頭での楽器販売です。楽器構造の基礎的な部分はすべてGCAで学べたので、挙げだすとキリがないくらい、いろいろな場面で役立っています。リペアで手掛けるのはお客様からお預かりしている大切な楽器ばかりなので、楽しいというよりは緊張の方が大きいのですが（笑）、その分バッチリ仕上げてお客様にお渡しする際に満足していただけたときは、やりがいと同時に“やっていてよかった”と感じます。

今後はお店以外の場所、例えば学校などで出張リペアなどができると面白いと思うので、来てほしいという学校の方、お待ちしています!!

『軽音マガジン 2017 Vol.3』 トップ・ページへ