ホーム > 特集・コラム > Interview 大森元貴/Mrs. GREEN APPLE(2ページ目)
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■現在のミセスの曲作りについて教えていただきたいのですが、大森さんが最初にデモを作るのですか?
そうです。ソフトはApple Logic Pro X(アップル ロジックプロテン)とAvid Pro Tools(アビッド プロツールス)を使っています。基本的にはLogicですね。
■ギターで曲を作って、それからデモを作っていく?
いえ、前もって曲の形を作っておいてからアレンジするという方法ではなくて、ドラムを打ち込んで、ベースを弾いて、ギターを録音してということとアレンジを同時進行させています。ですから、ギターを録音するときはアレンジしながらなんです。
■曲と歌詞はどちらを先に作るんですか?
メロディと歌詞は同時に出てくるので、どちらが先かは自分でもよくわからないんですよね。トラック・メイクを先にして、そこにメロディと歌詞をのっけていくような感覚です。漠然としたビジョンはあるんですけど、完成図を予想して作っているわけでは決してなくて。「母音がこんな感じ」とか「絶対にこの言葉は入れたい」「こういうフレーズはどうかな」といういろんなイメージを照らし合わせながら、作詞と同時にメロディを歌って録音しています。だから、ちょっと語弊があるかもしれないですけど、録音が済んだころには、もう「他人の曲」みたいな感じなんですよ。録ったものを聴き返してみて、「こんなフレーズでこんなメロディを歌ってたんだ」「あ、Bメロはこんななんだ」と、ハっとさせられる瞬間がけっこうあるので、自分でも面白いなと思ってます(笑)。
■ミセスの曲は、Aメロがすごくキャッチーですよね。
うれしいです。YouTubeとか試聴サイトで、はじめの30秒くらいしか聴けない場合などがありますよね。それに全く知らない人の曲を聴くときに、サビまでの30秒って、けっこう長い気がするんです。その30秒を待たせるくらいなら、Aメロからつかみにいきたいなという気持ちはあります。
■曲作りのときは、サビからではなく、曲の頭から順番に進めていくのですか?
そうですね。それこそイントロのアレンジから作っていくタイプです。もちろん、サビからという場合もあるんですけど。
■大森さんが作るデモには全パートのフレーズが入っていて、それをメンバーに伝えて演奏してもらうという流れなのでしょうか?
はい。デモはマスタリングまで自分で済ませて、それをディレクターにも聴いてもらって、「声はこれくらいコンプでつぶしたい」とか、そういうことまでイメージを伝えるようにしています。また、メンバーには楽譜を書いて渡すわけではなく、音源だけを聴いてもらっているんです。
■ということは、メンバーの方はデモを耳コピしているんですか?
そうです。「こういうふうに聴こえた」という感覚だけでフレーズをとらえてもらったほうが、それぞれの手癖が出るかなと思って。だから、ギターを引き立たせたい曲でも、あえてギターの音量を落として若井(滉斗)にデモを渡したりしています(笑)。
■大森さんが考えたフレーズであっても、バンドで演奏すると違うものになったりするのでしょうか?
全然違います。メンバーが弾くから良い部分と、打ち込みだから良い部分が、それぞれあるんです。小6でバンドを組んで、その楽しさを忘れたことはなかったんですけど、中学では友達とも遊ばずに家にこもって音楽を作っていたので、ミセスを組んだときに、あらためてバンドの楽しさを知ったような感覚なんです。「あ、こういう瞬間にグっとくるんだ」というのを本格的にわかったのはミセスを組んでからですね。だから、もっと早くからバンドをやっておけばよかったなと思います。友達と合わせるからこそ生まれるグルーブみたいなものは言葉にできないんですけど、そういう言葉にできない感覚は早いうちから味わっておくと貴重な財産になるんじゃないでしょうか。
■2月にリリースされたシングル曲「Love me, Love you」はどういうきっかけで生まれた曲ですか?
もともとブロードウェイのミュージカルのようにすごく華やかなものが好きなんですね。「人に夢を与える」と言ったらちょっとキレイごとかもしれないですけど、いわゆるエンタテインメントですよね。ディズニーランドや遊園地なども同じだと思うんですけど、そういうエンタテインメントをあらためて魅力的に感じたので、それをどうにかして音楽に落とし込めないかなと思ったのがきっかけです。展開がたくさんあったり、金管楽器がたくさん出てきたりと、まさに舞台のような展開のある曲を作りたいなと思ったんですよ。
■歌詞のコンセプトは?
自分は今、21歳なんですけど、もう少し下の世代の中学生や高校生って、恋愛というものがあまり身近でなくなっちゃってるような感覚があるんです。これは自分たちの世代にもあったものですけど、「恋愛しなくていいや」と最初から自分で決め込んじゃっていたり、恋愛って「する」とかそういう「動詞」じゃないと思っていたりするんですね。そういう状況に対して、「恋」とか「愛」、つまり人とのつながりですよね。別に恋人との愛じゃなくて、家族や友達との「愛」でもいいと思うんですけど、そういうものをあらためて歌ってみても面白いんじゃないかなと思ったんです。「自分たちの世代が代表して」と言ったら、言い過ぎかもしれないですけど。
■今の中学生や高校生の間には、「恋」とか「愛」というものを、能動的にとらえられない雰囲気があるのですか?
あると思います。そういうものにリアリティがなくなってるというか。「絶食系」という言葉もあったりしますよね。これは恋に限らずですけど、人とのつながりをあらかじめ自ら決め込んでいる人が多い気がしてて、「それってどうなの?」と。それはちょっと寂しい気がするし、まだあきらめる必要とか、何かを決め込む必要は全然ないのに、と思うんですよ。もちろん、人生の中で恋人を作るのがすべてではないと思いますけど、自分はずっと音楽をやりたくて、それに没頭していたものですから、そういう何かのめり込めるものがあるといいんじゃないかなと。
■そういう視点で歌詞を読むのも面白そうですね。
そうですね。下の世代だけじゃなくて、自分たちや上の世代に対しても、いろんな部分で疑問を感じる瞬間があったりして、それが作詞の原動力になったりもするんです。だから、意識して歌詞を見てくれると伝わるものがあるのかなと思います。ミセスの曲はポップなので、けっこう際どいことを言っていてもポップスの魔法にかかってるところがあるので、柔らかく聴こえたりするとは思うんですけどね。それも意図ではありますし。でも、あらためて歌詞だけ見てもらったりすると、ちょっと面白いかもしれませんね。
■大森さんのボーカルはハイトーンがとても魅力的ですね。ミックス・ボイス的というか、どこからどこまでが地声なのかよくわからないのですが……。
自分でもわからないんです(笑)。意識しなくてもミックス・ボイスになっちゃうというか。だから、逆にチェスト(地声)を出したいくらいです(笑)。ミックス・ボイスって簡単に言えば「裏声の表」みたいなことなんですよね。裏声は引いて出すような声なんですけど、それを鼻に通して裏声に聴かせないのがミックス・ボイス。でも、そういうことを知ったのは後からで、僕は昔からそういう歌い方だったんですよ。
■どれくらいの音域で歌えるんですか?
それは調べたことがないですね。今はホイッスル・ボイスの勉強をしているんですが、どこまで出るのかわからないんです。
■ちなみに、声変わりはしましたか?
それがなかったんですよ。小学生のときの映像を見ると、今より声が低いんです。それって生物学的に大丈夫かな?という(笑)。変声期のときにバンドを組んでずっと歌っていたから、そこでノドが固まった感じなんですかね。
■ボーカリストで参考にしている方などはいますか?
特に目標にしているわけではないんですけど、「こういうシンガーってかっこいいよな」と思う方はいます。例えば、マルーン5のアダム(レヴィーン)とか、サム・スミス、アデルなどですね。ああいうシンガーは強いなと思います。特にアダムは自分と声質は違いますけど、ミックス・ボイスを使っている部分などはライブDVDや動画を観て勉強したりはしました。
■歌の表現力に関して何かトレーニングをしたことは?
トレーニングはしていないですね。やはり作詞しているのが自分なので、おのずと歌詞を歌うときに自分が反映されているというのが一番大きいと思います。あとは先ほどもお話したように、エンタテインメントが好きなので、音楽もエンタテインメントであるべきだと思っているんです。だから、声にしても展開があって見てて飽きない、聴いてて飽きないという音楽を作りたいと思っています。だから、「Speaking」も最初は語りかけるように始まりますしね。演劇と言うと大げさかもしれないですけど、音楽とは通じているものがあるのかなと思います。
■既にアルバムもほぼ完成しているそうですね。
はい。「2018年の年間コンセプト」というわけではないですけど、「エンタテイメントをもっと掘り下げていこうよ」という話をしているので、これまでとはまた違うMrs. GREEN APPLEをアルバムで表現できたと思います。「バンド」という概念で聴くと、「これはバンドなのか?」という疑問を持ってしまうような曲があったり、逆にごりごりのバンドっぽい曲もあったりするので、とても音楽的なアルバムですね。あと、例えば「Love me, Love you」はビッグバンドをコンセプトとした曲ですけど、そういうアレンジを採り入れるというのは歴史の勉強でもありますよね。そんな音楽のいろんな歴史が詰まっているアルバムになっているんです。だから、すごく面白いですよ
■高校軽音楽部でコピーできそうな曲もありますか?
もちろん! すごくやりやすい曲もあるので、ぜひ聴いてほしいです。
■5月からは全国ツアーも始まりますね。
ライブに関しては、もうロック・バンドではなく、すごくエンタテインメントだと思います。何をもってロック・バンドと言うのかというナゾはありますけど(笑)。とにかく面白い挑戦になると思います。
『Love me, Love you』
ユニバーサルミュージック
初回限定盤 CD+DVD:UPCH-89374
通常盤 CDのみ:UPCH-80487
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